TOEIC 200 |
TOEIC 300 |
TOEIC 400 |
TOEIC 500 |
TOEIC 600 |
TOEIC 700 |
TOEIC 800 |
TOEIC 900 |
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--> | 100 hrs | 250 hrs | 450 hrs | 700 hrs | 1000 hrs | 1350 hrs | 1750 hrs |
--> | 150 hrs | 350 hrs | 600 hrs | 900 hrs | 1250 hrs | 1650 hrs | |
--> | 200 hrs | 450 hrs | 750 hrs | 1100 hrs | 1500 hrs | ||
--> | 250 hrs | 550 hrs | 900 hrs | 1300 hrs | |||
--> | 300 hrs | 650 hrs | 1050 hrs | ||||
--> | 350 hrs | 750 hrs | |||||
--> | 400 hrs |

表「必要な学習時間数」
この数字は全て概算です。上達には集中度、母国語の運用能力、研修内容の優劣など、多くの要因に左右されます。この表で、目標スコア到達にどれくらい時間がかかるかを、現実的なレベルで把握できるはずです。もしそれが分かれば、多くの場合学習意欲低下の原因となる、現実離れした期待を抱かなくなります。従って、今度書店で『たった20日間でペラペラ英会話』の類を目にしても、これは単に誇張である以上に、あり得ない話であることが分かるでしょう。
TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)は、社員の英語力測定の手段として、おそらく最も費用効果が高く、利用しやすいものです。この理由から、日本では現在約2,400社の企業が採用しています。開発したのはETS(エデュケーショナル・テスティング・サービス)で、同社はGMATも開発しています。スコアは10点から990点まで、5点刻みです。評価の基準として、TOEIC 730点(TOEFL換算で約550点・下記注を参照)は、殆どのアメリカの大学で入学に最低必要なレベルと考えられており、TOEIC 730点未満レベルの志願者は入学を許可されません。TOEIC 875点(TOEFL換算で600点)は、高度な英語力が必要なMBAのようなプログラムに課されている最低基準です。
注(ETS公表の換算式) TOEICスコア×0.348+296=TOEFLスコア
TOEICは、英語力を正確に測る尺度としてはあまり有効ではなく、唯一可能なのは上達のおおまかなレベルを示すことである、と言わざるを得ません。実際TOEIC は短期間の上達を測定するには、全く不向きです (この「短期間」とは、およそ150時間以下の学習時間) 。残念ながら、多くの企業が受講生の上達を測るという目的で、わずか50時間から100時間の研修後にTOEICを実施していますが、このやり方は誤りです。TOEICは、最低どれくらい経ってから次の受験をすべきかについて、指針を公表していません。この情報が欠落しているのは驚くべきことで、企業がテストを頻繁に実施すれば、その分TOEICを作成する側が儲かるという理由のためかもしれません。
TOEICは、SEM(標準測定誤差)が25点あると発表していますが (SEMが25点とは、全受験者の68%が本当の実力よりプラス・マイナス25点の範囲にあることを示します)、様々な研究によると、厳密にはSEMが35点から47点の範囲にあることが分かりました。TOEIC実施の経験がある企業研修担当者は、自社のスコア分布を分析すれば、これを容易に検証できるでしょう。
ではTOEIC受験前に何時間の研修を受講すれば、意味のある結果が得られるのでしょうか?三枝氏の大規模な研究 (1985年)では、平均84時間学習した学生の53%がアップしたスコアは、50点に達しませんでした。この値はSEMよりも小さいため、統計として意味がありません。三枝氏は、意味のあるTOEICスコアを得るには、100時間から200時間の学習が必要だとしています。
しかし企業の研修担当者が、英語研修の全般的な効果測定にTOEICを使用するのは適切です。30名以上の受講生サンプルを使用し、最低100時間の研修実施後、研修の前と後で平均スコアを比較し、結果を前掲の表に示された標準に照らし合わせて評価することは可能です。
マーシャル・チャイルズ博士は、論文「日本企業のTOEIC利用の良い例と悪い例」で、TOEICに関して、次の5つの結論に達しています。(掲載許可取得済)
1) 母集団の全般的な上達度を測るには 結論:
(一定条件下で)適当。TOEIC平均スコアを受講生集団の比較に使用することは可能。ただし、本当に実力アップしたのか、それとも単なる運なのかを見極めるために、その数字は本当に意味があるのかをよく考察することが必要。また、たとえスコアアップ自体には意味があると分かっても、なぜアップしたかの理由は分からないまま、という可能性もあることに注意。
2) 異なる研修実施機関または研修内容を比較するには 結論:
(一定条件下で)適当。 研修担当者は、TOEICスコアは、初級者よりも上級者のスコアアップの方がより困難であることに留意する必要がある。
3) 学習者個人の上達度を測定するには 結論:
不適当。TOEICを個人の学習効果測定に使用することは概して有効ではない、あるいは誤りである。学習効果測定時の利便性よりも、スコアが毎回変動するというデメリットの方が大。その理由は、予想されるスコアアップの中に、SEM (標準測定誤差)が含まれるからである。
4)上達度に関して学習者とカウンセリングをするには 結論:
不適当。SEMがあるため、テストの問題の差異により、スコアが大きく変動する。例えば、点数の差は、マイナスの値になったり、非常に大きいことがあり、両者とも本当の実力を反映していない可能性がある。実際にテストを数回受験するとよくあることだが、前回よりスコアが低いと、学習者がやる気をなくす、という不幸なマイナス効果をもたらす可能性がある。
5) 学習者個人の学習指針としては 結論:
不適当。TOEICは診断用テストではなく、学習者の長所・短所を的確に指摘することができない。もし研修担当者が、スコアは変動することをよく理解した上であれば、受講生の全般的なレベル測定の際、おおまかな指針にはなりうる。
参考文献:
「日本企業のTOEIC使用の良い例と悪い例」 マーシャル・チャイルズ(1995年)日本語学教師協会・日本の語学試験(1995年) 「英語上達の予測」 三枝(1985年) 武蔵野女子大学・武蔵野英米文学(第18巻)